授賞式でファンダムが荒れるのはなぜ?モヤモヤ・ギスギスするファン心理と対立が起きる仕組み

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年末が近づくと、タイムラインの空気がピリッと変わる気がする…と感じたことはありませんか。
授賞式シーズンになると、毎年のようにどこかで言い争いが起きています。
推しが受賞できなかった場合、悔しさだけでは説明がつかないほど、ファンダムは大きく揺れるものです。
この記事では、授賞式でファンダムが荒れてしまう理由について、心理・制度・市場の3つの角度から見ていきます。

授賞式シーズンにファンダムが荒れる理由

ひとことで「荒れる」と言っても、その中身はひとつではありません。
ファンダムの外側で起きるぶつかり合いと、内側で起きる意見の食い違いのふたつは、似ているようで原因も後に残るものもまったく違います。

いちばん目につきやすいのが、別のグループを応援するファン同士の対立です。
「あの賞をもらうべきだったのは推しのほう」「この結果には裏があるのでは」といった投稿が、発表直後から一気に増えていきます。
きっかけになりやすいのは、受賞を逃した悔しさよりも「順位がついてしまったこと」のほうです。
授賞式は、その1年をひとつの結果としてまとめる場でもあります。
だからこそ、隣に並んだ相手との比較が避けられなくなってしまうのです。

また意外と根深いのが、同じ推しを応援している人同士のすれ違いによるものです。
「もっと投票を呼びかけるべきだった」という声もあれば、「これ以上推しに無理をさせたくない」という声もあります。
どちらも推しを想う気持ちから出てきた言葉なのに、向いている方向が少しずつ違うだけなのです。
外側との対立よりも、この内側の衝突のほうが後に尾を引きやすいと言われています。
最悪の場合ファンをやめてしまったり、攻撃側に回ってしまう「反転アンチ」となってしまうことも少なくありません。

授賞式で荒れる理由①:結果が推しや自分の心理と結びついているから

授賞式が特別なざわつきを生むのは、結果がファン自身の感情と直結しているからです。
まずは、心の側で起きていることから見ていきましょう。

積み上げてきたことに点数がついたように感じるため

推し活には、想像以上の時間とお金がかかります。
毎日のストリーミング・アプリでの投票・特典のために買い足したアルバム・寝る間を削って回したハッシュタグ。
どれも、誰かに頼まれてやったことではありません。

そうして積み上げてきたものがあるからこそ、授賞式の結果は「推しの評価」だけでは終わらなくなります。
自分たちが1年かけてやってきたことに点数がついたような感覚が生まれ、うれしさも悔しさも何倍にも膨らんでしまうのです。
熱心に動いていた人ほど結果に揺さぶられるのは、注いだものの大きさがそのまま跳ね返ってくるためです。

「自分たち」と「あの人たち」に分かれてしまうから

人は、どこかの集団に属していると感じると、その内側と外側を無意識に線引きするようになります。
心理学では社会的アイデンティティと呼ばれる働きで、スポーツの応援などでもよく見られるものです。

授賞式は、この線引きがもっとも強く出るイベントでもあります。
ノミネートの時点で「うちの推し」と「それ以外」がはっきり分かれ、結果発表でさらに差が可視化されるからです。
普段は他グループの曲も楽しんで聴いている人が、この時期だけピリピリしてしまうのは決して珍しいことではありません。

推しの表情に感情を揺さぶられるから

授賞式は、アーティストの表情が大写しになる場でもあります。
受賞スピーチで声を詰まらせる姿も、名前が呼ばれなかった瞬間の一拍の間も、カメラは容赦なく映し出します。
人の感情は、見ているだけで伝わってしまうものです。
推しがうれしそうなら自分まで泣けてきますし、悔しそうな表情を見れば胸が締めつけられます。
その感情の高ぶりがおさまらないままSNSを開いてしまうと、いつもより強い言葉が出てしまいやすくなるのです。

授賞式で荒れる理由②:納得できない部分が多い

授賞式への不満をよく見ていくと、そのほとんどは「受賞できなかったこと」に向いていません。
本当に引っかかっているのは、どうやってその結果になったのかが見えない部分です。

配点や集計期間がはっきりしない

授賞式の多くは、音源成績・アルバム売上・ファン投票・審査員評価などを組み合わせて受賞者を決めています。
ところが、それぞれが何%ずつ反映されるのかまで公表されている賞は多くありません
また集計期間も同様です。
どこからどこまでの活動が対象なのかがあいまいだと、「あのカムバックは入っているの?」という疑問が生まれます。
数字を見ながら1年間応援してきた人ほど、この不透明さが引っかかってしまいがちです。

審査員評価やノミネートの基準が見えない

もうひとつ議論になりやすいのが、審査員評価とノミネートの選定です。
どんな立場の人が何人で評価しているのか、どういう観点で点をつけているのかは、明かされないことがほとんどです。
ノミネート自体も同じで、「なぜこのアーティストは候補に入っていないのか」という声は毎年上がります。
基準が示されないままだと、ファンは自分たちで理由を推測するしかなくなります。
そこから「大人の事情なのでは」といった憶測が広がり、対立の火種になっていくのです。

人は結果より「決め方が公平だったか」を見ている

心理学には、手続き的公正という考え方があります。
人は結果そのものよりも、その結果にたどり着くまでの過程が公平だったかを重く見る、という指摘です。
これは授賞式にもきれいに当てはまります。
推しが受賞を逃したとしても、ルールが明確で誰にでも同じように適用されていれば、悔しさは残っても納得はできるものです。
反対に、決め方が見えないままだと「負けた」ではなく「決められた」という感覚になり、モヤモヤが行き場をなくしてしまいます。
荒れる授賞式と荒れない授賞式の差は、ここに出ていると言ってもよさそうです。

授賞式で荒れる理由③:授賞式が多すぎる

3つ目の理由は、授賞式そのものを取り巻く環境の変化です。
ここ数年で賞の数が一気に増えたことが、ファンの感覚にも影響しています。

授賞式ごとに評価される軸が違う

現在のK-POPには、主催元の異なる授賞式がいくつも存在します。

  • 音源チャートの成績を重く見る賞
  • アルバム売上を重視する賞
  • ファン投票の比重が大きい賞
  • 審査員や専門家の評価を中心に据える賞
  • グローバルな人気や影響力を評価する賞

つまり「何をもって優れたアーティストとするか」が、業界全体で統一されていない状態です。
ある賞では最高位に立ったグループが、別の賞ではノミネート止まりということも普通に起こります。
同じ1年を評価しているはずなのに結果が食い違うため、ファンの間で解釈が分かれてしまうのです。

「どの賞がすごいのか」で意見が割れる

賞の数が増えると、次に始まるのが権威をめぐる議論です。

「歴史がある賞のほうが価値が高い」
「これからはグローバルで評価される賞のほうが重要」
「人気投票が中心の賞では実力を測れない」

どれも一理あるだけに、決着がつくことはありません。
自分の推しが強い賞を高く評価し、そうでない賞を軽く見る…という構図になりやすいのも、対立が長引く理由のひとつです。
かつてのように「受賞=誰が見ても納得の価値」と言い切れなくなったことが、議論の土台を不安定にしています。

投票アプリの数だけ、時間とお金が削られていく

授賞式が増えるということは、投票の場が増えるということでもあります。
アプリごとにアカウントを作り、毎日ログインして、広告を見てポイントを貯めて、足りないぶんは課金で補うなど、ひとつなら日課として取り組めていたことも、いくつも重なれば負担になってしまいます。

さらに悩ましいのが、票の重みが金額で変わる仕組みが取り入れられている場合です。
無料でコツコツ貯めた票と、課金で購入した票が同じ土俵に並ぶため、どうしても規模の大きいファンダムや、資金を集められるファンダムが有利になります。

その結果、上位の顔ぶれがある程度固定されたように見えることも少なくありません。
「結局いつも同じところが強い」と感じたとき、ファンの中には諦めや不満が残ります。
応援の熱量ではなく、動かせる金額で決まっているのではないか…という疑いが芽生えた瞬間、その賞への信頼はゆらいでしまうのです。

業界側もアワード乱立に警鐘を鳴らしている

この状況は、ファンだけが感じているものではありません。
2024年3月、韓国音楽コンテンツ協会が無分別に開催されるK-POP授賞式に反対する声明を発表しました。
自ら主催していた授賞式を無期限延期するという、かなり踏み込んだ判断もあわせて示されています。

声明では、年間20以上の授賞式が開催されている現状に触れたうえで、有料の人気投票が収益モデルになっている点や、ファンの経済的な負担が積み重なっている点が問題として挙げられました。
また、アーティスト側の過密なスケジュールへの懸念も示されています。
同年7月には、公正で透明な授賞基準を示すことなどを盛り込んだガイドラインも発表されました。

ファンが感じている「なんだかモヤモヤする」という違和感は、気のせいでも心が狭いからでもありません。
業界内部からも同じ課題が指摘されている、というのは覚えておいてよいポイントです。

サークルチャートミュージックアワード開催の無期限延期を伝えるニュース記事(韓国語)

SNSが対立を実際より大きく見せてしまうことも

心理や制度・市場という3つの理由に加えて、それを何倍にも拡大してしまうものがあります。
それは授賞式シーズンのSNSです。

怒りの投稿ほど、遠くまで届いてしまう

SNSでは、穏やかな感想よりも強い言葉のほうが拡散されやすい傾向があります。
「おめでとう」より「納得いかない」のほうが、引用やリポストで広がっていくのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
その結果、タイムラインには不満の投稿ばかりが並ぶことになります。
実際には静かに喜んでいる人のほうが多かったとしても、画面の上では対立している声だけが目立ってしまうのです。

一部の声が「ファンダム全体の意見」に見えてしまう

もうひとつ怖いのが、少数の過激な投稿がそのグループのファン全体の総意のように受け取られてしまうことです。
数万人規模のファンダムの中の数人でも、切り取られて拡散されれば「あそこのファンはこうだ」という印象になってしまいます。

そこから報復のような投稿が始まり、お互いに一番きつい部分だけを見せ合う状態になっていきます。
本当は大多数が関わっていないのに、ファンダム同士が全面的にぶつかっているように見えてしまうのは、この仕組みによるものです。

わざと反論させようとする投稿も混ざっている

授賞式シーズンには、最初から反応させることを目的とした投稿も入り混じりがちです。

ハッシュタグを検索しただけで、推しの実力を否定する言葉や、受賞を逃した瞬間の表情をわざわざ切り抜いた動画が流れてくることもあります。
グループ名で検索できないほど荒れる時期があるのは、こうした投稿がまとめて集まってくるためです。
中には、ファンが反論してきたところを引用して晒すところまでがセットになっているものもあります。

しかし反論した時点で、その投稿は自分のフォロワーにも届いてしまいます。
広めたくなかったはずの言葉を、自分の手で運ぶことになるのです。
相手が求めているのは正しさの議論ではなく、反応そのものだと考えておくとちょうどよいくらいです。

目に入ってしまったときは、乗らずにそっと通報とミュートで手放しましょう。
何も言い返さないことは、負けでも見て見ぬふりでもありません。
タイムラインを穏やかに保つための、いちばん確実な方法です。

意外と消耗するファンダム内での衝突

外側の対立ばかり注目されがちですが、実際にしんどい思いをする人が多いのは内側のほうというケースもあります。
授賞式シーズンには、同じ推しを応援する人同士でも空気が張りつめやすくなるためです。

「もっと頑張るべき」と「無理をさせたくない」

投票期間になると、ファンダム内で呼びかけが活発になります。
「1日何票入れよう」「この時間に一斉に投稿しよう」といったものを見かけることも多いのではないでしょうか。
ここで生まれるのが、熱量の差によるすれ違いです。
呼びかける側には推しを勝たせたい一心があり、しんどさを感じる側には推しに無理をさせたくないという気持ちがあります。
どちらも間違っていないぶん、話がかみ合わないまま溝ができてしまうことがあるのです。

使える時間やお金の差が見えてしまう

課金の負担は、ファンダムの中の空気にも影響します。
使える金額や時間は人によって違うのに、投票の呼びかけはどうしても全員に同じ声のかけ方になってしまうためです。
そこに、たくさん動ける人とそうでない人の間の言いづらさが生まれます。

「貢献できていない気がする」と感じてしまう方もいるかもしれませんが、応援の価値は金額で決まるものではありません。
ただ、授賞式は数字が正義になりやすい場でもあるため、その感覚が強く出てしまうのです。

荒れやすい時期は情報から離れることも大切

ここまで見てきたように、授賞式が荒れるのは誰か特定の人が悪いからではありません。
仕組みのほうにざわつきやすい要素がそろっているためです。
また荒れやすいタイミングにも、ある程度のパターンがあります。

  • ノミネート発表の直後(本当に話題になっているのか?という疑問)
  • 投票の中間結果が出たとき(受賞を狙うファンダムの語気が強まりがち)
  • 受賞者が発表された直後の数時間(喜ぶファンダムと荒れるファンダムで別れがち)
  • 翌日以降、切り抜き動画が拡散されはじめる時期(改めて制度や投票数などが言及される傾向)

このピークは、長くても数日で落ち着いていきます。
知っておくだけでも、タイムラインの荒れ方に驚かずに済むはずです。

そして覚えておいてほしいのが、声の大きい人の感情まで一緒に背負う必要はないということです。
強い言葉が並んでいるのは、その人が今うまく整理できていないからであって、あなたが引き受けるべきものではありません。
納得できない気持ちがあっても、それを誰かにぶつけるかどうかは別の話です。

推しが気持ちよく次の活動に向かえるかどうかは、賞の数よりも、待っている場所がどんな空気かで決まる部分が大きいはず。
無理に盛り上がらなくても、静かに1票を入れるだけでも、その日は見ないと決めても大丈夫です。
あなたのペースで続けていく応援が、いちばん長く推しのそばに残ります。

まとめ|荒れるのは勝ち負けだけの話ではないから

授賞式で荒れる理由には、推しと自分を重ねてしまう心理・配点や審査基準への納得感の薄さ・授賞式の増加による価値観のばらつきという3つの要素が絡み合っています。
そこにSNSの拡散のされ方が加わることで、実際よりも激しい対立に見えてしまうという構造です。

つまりファンダムのぶつかり合いは、単純にどちらが勝ったかという話ではありません。
何をもって評価とするのか、その賞にどれだけの価値があるのか、決め方は公平だったのかなど、認識の違いや不透明さが、結果というかたちで一気に表に出てくるのが授賞式なのです。

理由がわかっていれば、渦中にいても少しだけ落ち着いて眺められるようになります。
今年の授賞式シーズンも、心穏やかに推しを応援していきましょう。

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